恋愛週間2


喫茶店を出ると外は雨だった。




鞄から折りたたみの傘を出す。
「今日は雨が降らない。」
そう言い張った彼女は傘を持っていない。




「入れてあげないよ。」
口ではそう言いながら、僕は傘を彼女の方に傾けて歩き出す。




「相合傘なんて久しくなかった。」
そう考えた瞬間、後悔した。
彼女との近すぎる距離を妙に意識してしまう。




白いブラウスの袖と黒いTシャツの袖は、触れ合うたびに解れていく。
二本の解れた糸が一本の絹糸を紡ぎだし、僕の心はその絹糸に締め付けられる。
細く、強く、美しく。
絹糸は彼女の心が紡ぎだしたもの。




動揺からか、歩調が乱され、彼女とペースが合わなくなる。
自然、彼女は傘から出てしまう。
けれど、何も言わない。




先ほどまでの、肩をつかんで抱き寄せようなどと考えていた余裕はまるでない。
横を向くことさえできず、視線だけを向かわせる。
彼女は前方の一点だけを見つめている。
その表情は黒髪に隠され伺えない。




解れが肩まで達し、柔らかな肩が露になろうかというころで地下鉄の駅に着いた。
惜しいと思う一方で、締め付けられた心は限界だった。




傘を畳む間に、位置は入れ違いになり、彼女は僕の右手に位置する。
ブラウスの左袖は雨に濡れ肌が透けていて、幾分寂しげに見える。
そこから伸びた白い腕は眩しく、直視できない。




「まずい」
そう、危惧した通り、彼女は僕の右肩がずぶ濡れなのを見つけてしまう。
僕は、僕の右肩をタオルで拭こうとする彼女から反射的に逃れる。
きっと、タオル越しでも知れてしまうだろう。
雨に濡れ、冷えたはずの右肩に熱が篭っているのを。
いや、右肩だけでなく体中に、だ。

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