大殺界


筆まめな方なので、というと反感を買う人がいそうなので、「一時的に」筆まめだったのでとしておこう。人からの手紙がそれなりにある。
日記やブログと違って、他人から見た自分というものが垣間見えて、久々に読むと面白い。月日を経ても書かれていることはあまり変わらなくて、意訳すると「もっと精神的に成長したら?」ということで、いま読んでも心を突く痛みを感じながら、差出人の自分に対するご理解とご配慮に感謝しています。「これだけ成長した」と姿を見せることが出来ないのは、情けない限りですが。

しかしながら、今年は「気合い入ってるね!今年はいい年になりそうだね!!」と年明けに言われています。ついに、成長を認めてもらえたかという自負心を指先で柔らかくつつかれたようなこそばゆさを、その言葉に感じるのです。
なにが気合い入っていたかというと、年賀状が正月に届いたというもので、そりゃもう年末に重い風邪をひき外に行くことも出来ず、仕方なく年賀状を作っていたわけですから、その気合いの入れようと言ったら、ここ近年で一番手を抜いています。いや、風邪ひきだし。

そんな、偶然の産物から産まれた今年の気合いの入れようというのはすさまじいもので、おみくじなんて引いたら、もちろん凶です。細木数子に言わせると、大殺界です。
気合いの入っていない人が、無理に気合いを入れたところで、いいことなんて一つもありません。

そんな中、ローマに行ってきました。3泊5日かな?実質丸2日間のローマ滞在でした。信仰心のある方には申し訳ないですが、宗教ってバカですね。それもかなりの。おそらく、個々の価値が今よりも遙かに小さいために、集約した膨大なエネルギーを使う対象が宗教になったのだろうと思いますが。

旅行自体はとても良かったです。帰りの飛行機で、隣に座った二十歳前くらいのロシア人の女の子があまりに可愛かったので、話しかけてみました。いわゆるナンパです。特に盛り上がらなかったですけど。話の噛み合わなさにはにかんだ笑顔がそれまた可愛かったです。苦笑とも言います。でも、成田に着いて気づいたのですが母親連れでした。彼女も30年くらいすると、あんな風になるのかと思うと話が盛り上がらなくて良かったのかも知れません。

その旅行の際に、iPodの音がイヤホンから聞こえづらくなって、イヤホンの根本の部分を押さえると直るので、またイヤホンが壊れたと思って買い換えたら、iPodの方の故障でした。iPodは新品交換されたのですが、修理に出す際は恥ずかしいデータを消すのに必死で、バックアップのことは考えていませんでした。。これまで買った音楽はどうしてくれる。(※ちなみにアプリは再ダウンロードは無料です。)

大殺界の始まりです。

それでも近づいてくれる方は、今年もよろしくお願いします。

初雪


エスカレーターを上ってフォームに出ると、通勤の時間帯から少し遅いせいか人はまばらだった。
向かいの下りのフォームには女性が一人いた。ベージュ色の耳当てをしたその女性は、ホーム中央のベンチに腰掛けた。今年一番の寒さに冷やされた白いプラスチック製のベンチの感触が伝わってくるようだった。
彼女は鞄から保冷瓶の水筒を取り出して、蓋を兼ねるカップに注いだ。カップから湯気が立ち上ったが、その湯気を飲み込むようにカップに口をつけた。少しのあいだ、時間が止まり、その後で、白い大きな綿が彼女の口元から広がった。




エレベータが二階に止まると、レインコートに水滴を吸い付かせた20前後の女性がいた。
バイク便の袋をかかえている。この雨の中配達しているのだろう。ロビーで降りると、彼女は次の配達先を確認するために地図を広げた。それを横目に、傘を差して外にでると坂道を下った。大通りに出て信号待ちをしていると、隣に自転車が止まった。先ほどの女性だった。防寒用のマスクを下にずらして、大きく息を吐いた。やはり、白い大きな綿が彼女の口元から広がった。




その日、東京には初雪が降ったらしい。