最近、電車の中は寝てしまっていて、だいぶご無沙汰しているが、
電車に乗る際に密かな愉しみがある。
まず、カバーをかけていない本を読んでいる人を見つける。
個人的には、人前で自分の読む本のカバーをかけないなんて
自分の信条を赤の他人に見られてもかまわないという
開けっ広げなことが出来る人たちを尊敬の念すら覚えてしまうのだが、
彼らがいないと始まらない。
彼らの読んでいる本の題名だけを目で追い、そこから妄想する。
その本がどんな、物語なのか。
いま、その物語のどの部分を読んでいるのか。
そんな遊びを久しぶりにやってみた。
「傘の下のしずく」 著者 不明
日の目を見ない娼婦の話。
傘の下の雫は、日が差した刹那、芽を吹き出す情熱の源泉。
だが、決して日が差すことはなく、
傘から新しい滴が落ち、情熱は薄められてしまう。
情熱は単純に薄められるかといえば、必ずしもそうではない。
新しく注入された滴は、新たな情熱が生み出し、以前の情熱を再生成していく。
生命の循環のように情熱も循環している。
一人の人間と社会ではなく、
一人の人間を形成するいくつかの情念と社会を向き合わせた作品。
当たり障りのない妄想に拍手。
主人公の名前すら決まらなかった。