恋愛週間1


よく言えば、従兄のような存在なのかもしれない。




兄としなかったのは、四親等とすることで、
わずかに残された可能性に期待するといった意味はない。
兄妹のような同じ屋根の下で暮らしている者達が放つ熱い絆ではなく、
どちらかというと、暖かい絆があるからだ。




「いま電話してもいい?」




僕にとって珍しい長電話は、いつも彼女から来るメールから始まる。
そして、結局は僕から電話することになる。
「別にいいよ」
そうメールして、電話を待つのは気がひける。




コール音の間、僕はこの言葉を待つことになる。
「もっと、このことに長けている人を選ぶべきだな。」
彼女が相談を持ちかける時の枕詞である。
相談の内容は友人関係、自分の将来、ストーカーのことなど様々だが、
今回は彼女が口にする前から、今の彼とのことだと気づく。
なにも、
「どうしよっかな。」
と、なかなか本題に入れないでいる彼女から知ったわけではない。
今の悩みはそれ以上の悩みなどないだろうから。




話を聞きながら少しだけ心が痛むことに気づく。
焼け焦げて燃え尽きたはずの恋なのに、まだどこかで燻っていたらしい。
彼女の吹く新鮮な空気が鞴からもたらす風のように僕を駆け巡り熱をもたせる。
僕は話しながらベランダに向かい、足をベランダの外へ投げ出した。
梅雨の湿り気を持った外気すらも、僕を冷やす。




ほとんど聞き役に徹し、わずかにしたアドバイスを僕はあまり覚えていない。
「そんなヤツとは別れてしまえ。」
そう言えるだけの図々しさを持っていたら、どんなに楽だっただろう。




電話を切って数分後にメールが着信する。
携帯電話のディスプレイに映し出された彼女の名前を見ながら思う。
古い恋がオレンジ色に輝いた余韻を楽しむくらい許されるだろう。
再び元の炭に戻るまでの間ぐらい。




「ありがとう、素で感謝してます。」




たったそれだけの言葉でうかれ、かすかに残される恋への可能を、
ただひたすら願っていた時期は過ぎた。
もう、自分に与えられた役割をただ果たすことが出来るだけは大人になった。

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