ツンデレ

俺もよ、いい加減飽きてきたんだが、また例の野良猫のことだ。

今日、久しぶりに見かけたんだけどよ、近くの駐車場のどまんなかで、偉そうに日向ぼっこしてやがった。俺を見かけたら、気だるそうに頭上げてよ、ジロジロ見てやがる。俺は気付かねぇ振りして、通り過ぎようと思ったんだけどよ、丁度カメラを持ち合わせていることに気付いて、生意気なあの野良猫の写真でも撮って、酒の席で話の種にするかと野良猫の方に寄っていった訳よ。

その時のアイツの顔っていったら、呆れたね。餌をくれると勘違いしやがってるみてぇで、期待に満ちた顔。世の中、そんな甘いもんじゃねぇっていうの。俺はよ、野良猫から1歩離れたところで、カメラを構えて写真を撮り始めたわけよ。そしたら、あの猫のやろう調子にのりやがって、ポーズを構えるみてぇにちょいと顔を上げて、気取った顔をしやがった。さらに、大きく口あけて鳴いたりしてよ、どこぞの飼い猫でもねぇのに、おめぇ、慣れてるなぁ、と思わずいっちまいそうになったじゃねぇか。

だがよ、終盤に差し掛かると、もう飽きたのかわかんねぇが、ぐたぁっと横になって、でっけぇ欠伸を一個しやがった。生意気にもほどがあるってぇの。てめぇは何様なんだ。まぁ俺も、小汚ねぇ野良猫の写真を撮るのに飽きちまってよ、カメラ閉まって立ち去ろうとしたら、どうも俺の背中に向かってみゃぁみゃぁ鳴きやがってたみてぇだ。あぁ、そんな声、俺の耳には届かなかくてよ。風の噂っていうのか、後から誰かから聞いた気がするだけなんだけどな。写真撮ったんだから、餌ぐらい置いてけよってことなんだろうな。その根性が悲しくて、涙がでてくるね。なんで、てめぇ、写真を数枚撮っただけで、餌を得ようという情けなさ。撮ってもらえたことに感謝するのが、江戸の野良猫ってもんだろう。

そんなことがあってよ、飲まなきゃやってられねぇってんで、つまみ用に、スルメを買って帰ったさ。勘違いすんなよ。アイツのためなんかじゃねぇ。俺のつまみ用だからな。

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