煎茶

市販されているペットボトルのお茶が飲めない。

「お茶の味がする飲み物」という認識しかない。お茶の、お茶らしい甘みも渋さもく、口に広がるのは妙な味。その点をお茶の国の出身者に聞くと、こんな答えが帰ってきた。
「酸化防止剤のためにビタミンCを入れているからデスヨ。だから少しスッパイんデスヨ~。」
あの妙な味は酸っぱさだったのかと、納得。でも、それだけ知っているのに、なぜあなたはペットボトルのお茶をガブガブ飲むのだろう?少し水で薄めてまで。

夜中の3時に、そんな話をしたのを思い出し、どうしても熱いお茶が飲みたくなって、数ヶ月ぶりに急須と湯のみを引っ張り出してきて洗い始めた。

洗い終えると、まず、急須と湯のみをお湯で温め、一度お湯を捨てたあと急須に茶葉を入れる。そこに、お湯を少しだけ入れて30秒ほど軽く蒸す。蒸した後にお湯を入れて2分ほど待つ。お茶の葉が開いた頃合で、湯のみに最後の一滴まで注ぐ。
さすがに、「お湯の温度は70度で」とまではいかないけれど。
ついでに、軽く蒸すのは何かで読んだ気になっていたが、どうも自己流らしい。

湯飲みに下唇をつけて、緑茶の香りを吸い込んだ後、上唇で柔和な陶器の感触を味わったら湯飲みを傾ける。
市販されているお茶でも、粉末で作るお茶でもないこの味。これを飲むと、確かに「酸っぱさ」という存在を排除し、甘みと渋みが舌の平を転がって喉へ向かっていく。

もちろん、湯のみも一連の流れの一つで、感じの良い湯のみやグラスがあると、思わず口付けしてしまいそうになる。唇が陶器に触れた時の感触や両唇で挟んだ時の厚みを確かめたくなる衝動にかられるからだ。着る物は試着をするのに、なぜ湯のみやグラスは試飲をできないのだろう。唇という無防備な場所に触れさせるほど、心を開く必要があるものに対して。

満たしていったお茶が、羊水のように自分を包みこむようだ。
今日はぐっすり眠れるだろう。

とりあえず、日本茶アドバイザーにでもなろうかと考えてしまった。

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