飛翔


垂木と言えばいいのだろうか。
体ひとつ分もないであろう、その部分を窮屈そうに鳩が歩いていた。
立ち止まって尻をつきだし、白い汚物を落とす。
ホームにピシャっと、感じの悪い音がした。
幸いにも、付近に人はいなかった。




古人は、鳥を見て、ただ飛びたいと思ったわけではないだろう。
崖から放尿する爽快感を知り、
空から放尿し脱糞する快感に思いを馳せたからに違いない。
鳥のように汚れた物を地上に捨て去り、澄んだ空にいつづけたいと。
だからこそ、空を飛びたいと人は願ったはずだ。




けれど、その濁汚した心情は清澄な空と懸け離れ、
空は人を受け入れようとはしなかった。
やがて人はその願望を隠し、今に至る。




生命の体を通り抜け、汚れる。
ゆえに重力に逆らえず落ちていく物を目で追いながら、
それが地上を汚す僅かな間に、そんなことを思った。




いま、人は空をその手で汚し、人の醜さと同質化することで、
その秘めたる願望を徐々に公然のものとしつつある。




こうとも。

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