もし、風がデューク更家だったら

「風がデューク更家だったら。」

我こそがこの三人の中で最も妄想好きだ、と主張しあったが、他の二人が自分の妄想を披露するまでもなく、女子大生の妄想が圧倒的に勝っていた。

彼女は続ける。
「ため息すらデューク更家がでてくるし、駅のホームなんて、ひどい。電車が来るたびに、デューク更家がそこら中に現れることになるのだから。風が固体じゃなくて本当に良かった。」

俺が、が主語の妄想で戦おうと思ったことに恥ずかしさを覚えた。

口が軽やかになった彼女は、生き方についても語りだした。

「私は人生を全力で生きている。すると時々、やっかみなのか、私にひどい言葉を吐く人達がいるけれども、彼らに向かって私はこう言うの。『あなたみたいな人に、いつ殺されてもいいように、私は一日、一日を大切に全力で生きてる。』って。」

にこやかに笑っているけれど、瞳はひどく落ち着いている。先日、21歳の誕生日を迎えたばかりの彼女に抱いた、敗北感に似た感情と畏怖。

影響されやすい僕は、せめて明日だけは全力で生きてみようかと思った。

明日、まず嫌いな上司を見つけよう。
そして、胸倉をつかんで
「俺は、お前に殺されてもいいように、全力で生きる!」
と宣言してみよう。

そう彼女の前で宣言してみたが、生きることに真摯な彼女には少し失礼だっただろうか。

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