新仲見世通りの西の端に学生時代のアルバイト先があった。
浅草駅を降りると人混みを避けて新仲見世通りから数本隣の細い道を使い通っていた。その裏道には、隠れた名店と言われてそうなフランス料理屋やさびれた日本料理屋、その隣に古いラブホテルと場末のような薄ら寒さすら感じる細い通りだったが、細い通りから目抜き通りに出たときにはある種の爽快感があった。そしてまた裏道へと入り、食通街を抜ける。朝なら蕎麦屋がガラス越しに蕎麦を打っていて、昼なら隣の煎餅屋が直火で煎餅を焼いていた。
同じ道のりを数年ぶりに歩いてみたのだが、低層階の古い建物の奥にそびえるスカイツリーを見ると、裏道だけでなく街全体が時代に取り残された場所のようで余計にうら寂しく感じてしまう。ただ、裏道にも蔵を模した造りのカフェやコンクリート打ちっ放しの寿司屋ができていて、そういったお店には周りから浮いたおしゃれさがあった。一番驚いたのは、先のラブホテルがTOKYO KABUKIという森田座式の定式幕を真似た黒、柿、萌黄一面の派手な外装になっていたことだった。看板には「歌舞伎」と書いてあるが、大きさから劇場とも思えず窓口もない。中も見えず、何のお店なのかが分からなかったが、よくよく看板をみたらGUEST HOUSEと書いてあったので、ラブホテルを改装して外国人向けにしたのだろう。あるいは、内装もそのままでラブホテルに興味のある外国人向けなのかもしれない。
つぶれてしまったカフェでアルバイトしてた身として言うのもなんだが、浅草には駅前以外、利用客のわりに使えるカフェが少ないと思う。ただ、使えるというと、静かで、椅子やテーブルに余裕があり、なおかつ禁煙席。さらに電源が使えるとなおいいという勝手な要望になってしまうのだが。浅草は、そもそもおばさま方が多いのでうるさくてしょうがない。あげく土地勘もなくなってしまったので、カフェを探してぶらぶらしていたら、浅草と関係ないけれど大曲曲げわっぱのお店や帆布を使った鞄屋といった新しい店舗が開いていて新鮮だった。
古くからある洋食屋が美味しそうだったし、年配の男女が列をなしていた演芸ホールの落語も興味がある。帰りに新仲見世通りを抜けていたら、「1着買ったら、もう2着目無料」って、どっかのスーツみたいな売り方をしている洋服屋があって笑った。かつては何気なく通り過ぎていたプロマイドのお店とか、観光客気分でのぞいたら面白そうだ。まぁ買わないけど。
そのうち、じっくりと浅草観光をしてみたい。