死地

ずっと前どこかで逢ったのに、もう名前も顔も思い出せない人に先導されながら、これから向かう場所のことを考えていた。重い悲しみは体の中身を空っぽにさせられたようだったけど、この感覚、前にも味わったことがあるな、なんて冷静な自分もいたりした。

二度目だから、自分の向かう場所が死ぬための場所なのは分かっていたし、そういえば確かに死に装束をしている。一度もう死んでしまっていたから死ぬための場所じゃなくて、本来いる場所なんだ。でも、何でまたのこのこと戻ってきてしまったんだろう。

「本来の場所」は、墓地のような生活の香りから離れた気高い場所ではなくてビルとビルの間の狭い路地を進んでいった先にある陽の光も当たらない陰気なところだった。

周りの地面はコンクリートで覆われていて、ちょうど自分の体が入るくらいの枠が書かれているスペースにあって、何も言われなくてもそこが本来の場所だった。覚悟とか恐怖とかいった気持ちはなく、自ら向かおうとしたら、先導していた顔と名前を知らない知人に制止さた。

「野良猫がいて死体を荒らすから少し待とう。」
落ち着き払った言葉に妙に納得して、しかたなく待つことにした。けれども、野良猫もやがて放たれる死臭をかぎ取ったのか、去ることはなくむしろ数が増えていった。確かに、死んだ後とはいえ、この野良猫たちに体をむさぼり食べられるのは嫌だし、この場所にも迷惑な気がした。片付ける人にも。

結局、猫が去らないので今回は中止、ということで死地に向かうのは中止になった。

そんな夢を見た。