本の整理をしてしまうと、ついつい昔の本を読んでしまって読みかけの本がたまってしまう。この本も読みやすいこともあって、ついつい読んでしまった。
鷺沢萌の著書を読みふけっていた時があった。時間にしてしまえば、ひとつの季節が始まって終わるくらいには、熱が冷めてしまっていた気がする。格別に美しい文章でも、超絶な技巧をもった文章でもないのだけれど、毛布にくるまれているようなぬくさが好きだった。ささくれだった心を優しくなでて収めてくれるような。他の作品を含め、タイトルが文章と同じようにストレートなところも好きだった。
いま読んでみると、書いた当時は終わりかけたであろうバブル臭がするし、わたしを含めた登場人物の脆さは著者のその後を予感させるものがある。脆い人達を、無理矢理に励ますでもなく、突き放すでもない温度感が当時の自分には丁度よかったのだろう。
人間はたぶん、寂しかったり哀しいことがあったりするから、人のことを好きになるんだよね。
とか、
人を傷つけてしまったら大抵の場合、それと同じ深さの傷は自分で負わなければならなくなるものだ。
とか、章の一つ一つに、キーとなる文があって、「あぁ、そうか」って思ってしまう。ひどく当たり前のことが書いてあるのに。こういう言葉にいちいち引っかかっているくらいだから、前に読んだ当時からは精神的にまるで変わっていない幼いままなのだろう。
